ベトナムスケッチ > ベトナムコラム > ベトナムの日本人 > ...

末吉清一さん
琉球ガラス伝統工芸士

タグ:,
カテゴリ:ベトナムの日本人
更新:2011/10/18 – 10:22

編集部では、皆様からの情報をお待ちしています。情報掲載をご希望の方は、コチラまでご連絡を!

末吉清一さん(琉球ガラス伝統工芸士)

ベトナム人職人にも
創作の悦びを知ってほしい

「趣味の夜釣りの最中に、沖縄の空を見上げてふと思ったんです。この美しさを、なんとかガラスで表現できないかと」。

ガラス工芸といえば、透明感のあるものが一般的。しかし末吉清一さんは2年間の試行錯誤の末、「銀河シリーズ」と名付けられた漆黒の作品群を生み出した。宇宙を思わせる深い黒ガラスに、流星をイメージした金銀の粉を散らした、彼の代表作のひとつだ。

沖縄生まれの末吉さんは高校時代に、家から近いという理由で、琉球ガラスの工房でアルバイトを始めた。次第にガラスに魅せられ、大学時代もアルバイトを継続。工学部で電気について学んだが、結局、就職先にガラス工房を選んだ。

「ガラス工芸の奥深さは一言で言い表せません。最も面白いのは、作り手の心境がそのまま作品に表れることです。よく私の作品を観てくれている人には、『今、恋をしてるんじゃないの?』とか『失恋したでしょう』と、当てられてしまうくらいです」。

琉球ガラス作家として数々の賞を受賞し、脂の乗ってきた1996年に初来越。所属する「琉球ガラス工芸協業組合」グループの「シャトーヒルズ株式会社」のハノイへの進出に伴い、ベトナム人ガラス職人を育成するためだった。同社では、複数の職人が交代で来越して指導する体制をとっていたため、彼も日本とベトナムを行き来する生活に入った。当時をこう振り返る。

「あの頃のベトナムは工業ガラス製品が主流で、ハンドメイドを価値あるものとみなす考え方がありませんでした。ガラスが好きで志願してくる沖縄の新人に比べ、ハノイでは『近場の職場』として就職する人がほとんど。指導は大変でしたが、みんな勤勉で辛抱強く手先が器用。ガラス工芸に向いていますね」。

休憩時間を十分とるとはいえ、ガラス細工は蒸し暑い工房で根気の要る作業を強いられる。しかし挫折する者はほとんどなく、この16年間で多くの職人たちが育ってきた。特にここ数年の彼らの成長に手応えを感じた末吉さんは、創作ガラスに挑戦させることにした。

「ガラス工芸の本当の面白さは、創作にこそあります。ベトナム人の職人たちにも、この悦びを味わわせてあげたいんです」。

淡々とながら、力のこもった口調で語る末吉さん。まずは10年以上在籍する職人のうち、特に見込んだ数名に取り組ませてみた。

「日本では、小学校の時間割に必ず図画工作が組み込まれ、誰もが小さい頃から創作というものに慣れています。でもベトナムでは、創作がどういうものかわからない人も多いのです」。

まずはテーマを与えて作らせることから始めたところ、最近では自分でテーマを見つけられるようになってきた。

「ある程度技術がつくと、自分の作品を創作するようになる日本人に比べ、ベトナムの職人たちは、私たち日本人職人のデザインを製品化する作業を長年積み重ねてきました。結果的に、基礎の厚みという点では日本人より優れており、手応えを実感しています」。

経済発展を遂げ、富裕層も増えたベトナム。ガラス工芸も大ぶりのものなら、芸術品として買い手がつくのではと、末吉さんは予測する。琉球ガラスの魂を受け継いだベトナム人ガラス工芸作家の誕生は、きっともうすぐだ。

プロフィール
末吉清一 すえよしきよいち
1961年、沖縄県生まれ。琉球大学工学部卒業。高校時代より琉球ガラス工芸に打ち込み、1985年に「琉球ガラス工芸協業組合」に入社。沖縄の大自然や人間の感情の起伏をガラスで表現することで知られる。日本民藝公募展優秀賞や九州アート展奨励賞など受賞多数。2002年、沖縄県工芸士に認定。作品『恒星』は2009年、沖縄の伝統工芸品としては初めて伊勢神宮に奉献された。

掲示板ご利用の前にベトナムスケッチ掲示板ガイドラインをご参照ください。投稿にはFacebookアカウントが必要です。アカウントはFacebook公式サイトにて無料で取得できます。※編集部への質問や問い合わせに関してはコチラからどうぞ。

関連ベトナム記事

川口 涼子 さん/「ママラ」代表 川口 涼子 さん
「ママラ」代表

文/有田紳介 家事や育児も立派なキャリア! 主婦が活躍できる場を 身に着けたスキルは活かすべき 思い切って始めたイベント…

倉木 良樹  さん/ブログ「ベトナム起業日記」 運営者 倉木 良樹 さん
ブログ「ベトナム起業日記」 運営者

文/有田紳介 今日を楽しく幸せに。 ブログを書いて絵を描いて、生活に輝きを 仕事で作った試作が人気ブログに ベトナムのリ…

二瓶 彩菜 さん/「エニハピテックワールドオン ライン」代表 二瓶 彩菜 さん
「エニハピテックワールドオン ライン」代表

自分で考え行動する体験型教育を アジアの子どもたちに発信したい 自立心や行動力を育んだ 地元・福島県での教育 ベトナムを…

山本 篤史 さん/「A&Cコンフェクショナリー」代表 山本 篤史 さん
「A&Cコンフェクショナリー」代表

ベトナム人にも日本人にも愛される 日本のおいしいお菓子をベトナムに 社会的隔離で飲食店との企画 日本人コミュニティで話題…

池田 卓生 さん/「テーブルプロデュース」代表 池田 卓生 さん
「テーブルプロデュース」代表

日々の食卓がもっと豊かになる 「食のセレクトショップ」を発信 売りっぱなしではなく 商品の情報や製造過程も大切に ダナン…

五十嵐 珠実 さん/「タマオ」オーナー 五十嵐 珠実 さん
「タマオ」オーナー

愛情感じる品々を詰め込んだ小さな雑貨店 ベトナムの”かわいい”を、いずれは日本にも 初海外、移住…

小森 壮洋 さん/「エーデルワイス」代表 小森 壮洋 さん
「エーデルワイス」代表

素材選びは手を抜かず ハノイの人に価値を認めてもらえる菓子づくりを 日本人とベトナム人が思う 「あるといいな」を提供する…

長澤 由美 さん/「サリーズチアドリーム」 ディレクター 長澤 由美 さん
「サリーズチアドリーム」 ディレクター

新しい世界に飛び込む勇気と情熱 子どもたちに“チアの楽しさ”を伝えたい 幼馴染のチア姿に魅了され、 保育士からチアリーダ…

土橋 壮之 さん/「仁愛(ニャンアイ)老人ホーム」 介護福祉士/教育部長 土橋 壮之 さん
「仁愛(ニャンアイ)老人ホーム」 介護福祉士/教育部長

人から必要とされる喜びを感じながら ベトナム人と共に介護業界を成長させたい 天職と感じる、楽しい介護職 日本の経験を生か…

多多納 基さん/「ザ・ファーストバー」 オーナー 多多納 基さん
「ザ・ファーストバー」 オーナー

日本のオーセンティックなバーをベトナムで お客様それぞれの居心地の良い店でありたい 海外に、夢である自分の店を 30歳を…

山本 沙織さん& 坂本 美希さん/「wacca(ワッカ)」主催者 山本 沙織さん& 坂本 美希さん
「wacca(ワッカ)」主催者

子育てに悩むママに、仲間がいるよと伝えたい 「輪」のように繋がり「和」むママカフェを発足 異なる2人の力を合わせて ママ…

山田 貴仁 さん/建築家 山田 貴仁 さん
建築家

図面通りには進まない ベトナム人と一緒に正解を追いかける 人・モノ・場所を生かし ベトナム人のための建築を 2014年、…

黒田 佑子(ひゅーこ)さん/ハノイ在住インスタグラマー 黒田 佑子(ひゅーこ)さん
ハノイ在住インスタグラマー

ハノイ在住日本人がこぞってフォロー 日本人が知らないような生活情報を発信 6歳から書き続けた日記ブログ、そしてインスグラ…

田中 卓 さん/カメレオ代表 田中 卓 さん
カメレオ代表

ベトナム飲食業界で培ったノウハウを生かし、 オンライン専用のスーパーマーケットを開発 自社の仕入れシステムを生かし 高品…

谷島 隆広 さん/ソイソイ(Soy Soy)代表 谷島 隆広 さん
ソイソイ(Soy Soy)代表

日本式の豆腐&豆乳をベトナムで販売 消費者だけでなく、生産者にも貢献を 卸売業から生産者になりたい 新会社を立ち上げ追い…

国本 和基 さん/フリクラシー代表 国本 和基 さん
フリクラシー代表

好奇心のまま、自由に働ける会社だから生み出せる 企業にも求職者にも新しい人材プラットフォーム 2度目となるベトナムでの起…

奥村 真知子 さん/「国際連合児童基金(ユニセフ)ベトナム」プログラムオフィサー 奥村 真知子 さん
「国際連合児童基金(ユニセフ)ベトナム」プログラムオフィサー

子どもたちが可能性を伸ばせる世界を目指して 一個人の国際公務員として社会で役立つ人材に 日本とアジアの歴史に衝撃を受け …

松淵 将史 さん/コンテンツクリエイター 松淵 将史 さん
コンテンツクリエイター

動画は、人の心を動かす世界共通のツール ベトナム動画市場の可能性を広げていきたい 動画で「リアル」な情報を伝えたい SN…

吉田 和矢 さん/子育て駐在夫 吉田 和矢 さん
子育て駐在夫

子どもだってお父さんを求めている 男性による海外での子育ての道を極めたい 妻の海外赴任で帯同を決意 予想以上に少ない駐在…

NAOさん/ベビトレヨガインストラクター NAOさん
ベビトレヨガインストラクター

“ベビトレヨガ”で子育てをハッピーに ママと赤ちゃんが笑顔になれる時間と場所を 子育てをしながら、ヨガを追求 ママならで…