2011.06.28

ただいま現場で奮闘中!第18回

酪農の生産性向上は牛乳の普及のみならず農家の貧困対策にも有効 ベトナム中小規模酪農生産技術改善計画 斉藤聡専門家 [caption id="attachment_1171" align="alignright" width="242" caption="チームで作成した、酪農技術を図解したポスターを前に説明する斉藤さん"]斉藤聡専門家[/caption] 毎日の搾乳さえ可能なら、定収入を得られる酪農 ベトナムにはもともと、牛乳を飲む習慣はなかった。しかし政府はここ10数年、国民の健康増進と農業経営の多角化を狙い、酪農の振興に力を入れている。 「収入が収穫期に限られる農耕に比べ、酪農は定収入をもたらし、狭い土地でも収益を上げられます。貧困農家対策として非常に有効なのですが、定期的に搾乳するには、牛を管理する複雑な技術が必要となります」。 そう語るのは、「ベトナム中小規模酪農生産技術改善計画」に携わる、JICA専門家の斉藤聡さんだ。 乳牛は出産後、1年以上乳を出すが、徐々に量が減る。効率的に搾乳するには、年に1度の出産が理想的だ。それには、3週間ごとの発情期を見極め、妊娠をコントロールする必要がある。このような繁殖管理のノウハウのほか、乳房炎などの病気の予防法や、干草に特殊な処理を施し、飼料が不足する冬場に備える「サイレージ」、お灸や牛舎改良といった、暑さに弱い乳牛のための夏バテ対策など、多岐にわたる技術の指導を重ねてきた。 ピラミッド型研修システムと口コミで相乗効果を プロジェクトでは技術を効率的に広めるため、ピラミッド型の技術研修システムを構築した。国営の「酪農技術普及ステーション」のスタッフを頂点とし、そこから各省の役人や民間乳業会社の技術者へ、さらに彼らが各酪農家へと指導をするのだ。各段階の指導員を育成するほか、技術を普及させる別の方法も模索した。 「ベトナムは農村でも教育レベルが高く、人びとはコミュニケーション能力に長けています。そこで、地域ごとにモデル農家を選定し、その土地に合った酪農技術をデモンストレーションし、口コミ効果も狙いました」。 ここ数年、ベトナム畜産業の発展は著しい。JICAが酪農支援を始めた2000年に3万5000頭だった乳牛数は、2010年には17万頭となり、目標乳量35万tも達成できる見込みだ。これらの成果に、本プロジェクトが寄与した功績は大きい。2011年4月にプロジェクトは終了した。帰国に際し、斉藤さんは感慨をもって振り返った。 「最近、モデル農家以外の酪農家への訪問で、指導した技術の浸透を実感できる機会が増えました。ベトナムの酪農家が、より豊かになる未来を楽しみにしています」。

乳牛へのお灸 乳牛へのお灸

大勢の参加者が殺到するセミナー 大勢の参加者が殺到するセミナー

モデル農家で実施した、通風孔付き牛舎 モデル農家で実施した、通風孔付き牛舎

「サイレージ」技術の導入 「サイレージ」技術の導入

JICA ベトナム中小規模酪農生産技術改善計画 JICAでは2000~2005年にかけ、獣医診断技術の強化や、ベトナムの風土に適した改良牛の開発など、様々な酪農技術のための支援を行った。これに引き続き本プロジェクトは、2006~2011年の期間で、これまでの成果を末端の農家まで普及させる制度を構築し、中小規模酪農家の牛乳生産の向上に取り組んだ。 斉藤聡 Satoshi Saitou 1960年、北海道生まれ。大学で獣医学を学んだ後、海外青年協力隊員としてシリアへ赴任。民間研究所における、体外受精や受精卵移植の技術開発などを経て、1994年からはJICA専門家として、海外での酪農技術支援や東京のJICA研修所での技術指導に従事している。 プロジェクトの詳細は、下記のページをご覧ください。 http://www.jica.go.jp/project/vietnam/0601775/index.html